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親の体罰禁止について元児童相談所職員が思うこと。反対?賛成?しつけに体罰はいりません。

2019年6月、児童虐待防止法に、親の体罰禁止について明記されると報道がありました。まだ決定事項ではありませんが、これについては「どうやってしつけをすればよいのか」「親と子どもの立場が逆転する」などの反対の声が多くあがっています。

私はたったの数年間ですが児童福祉に携わっていました。うち2年間は児童相談所で虐待対応チームにおりました。

ので、この体罰禁止について思うことを書かせていただきます。

特に反対している方には読んでもらいたいです。かなり個人的な意見なのでそこはご了承ください。

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親の体罰禁止とはどういうことか

まず、法律で何が改正される、明記されるのかを確認しておきます。

みなさんが一番注目しているのは、

親がしつけに際して体罰を加えることを禁止する

という部分です。その他の点について、見落としている方が多くいらっしゃるので最初に確認しておいてください。

実際に、この決定についてみなさんの声をまとめてみると、

このように、圧倒的に、親のメンタル、育児のしにくさなどを心配する声が多いです。他には、児相や警察の教育、体制の強化や日本という国の子育て世代に対する支援体制の改善などを訴える声も多かったです。

スッキリでこの問題が取り上げられたとき、明らかに「反対派」が多かったですね。悲しいくらいに多かったです。

世間であがっている懸念の声、反対の声について、元児童相談所職員の立場からひとつひとつ解説させていただきます。

結論:体罰禁止は大賛成

様々な声に対して解説する前に、私の結論をお伝えしておくと、体罰禁止を法律に明記することには大賛成です。

子供を1回も叩いてはいけないとは言いませんが、それが「法律に明記される」ということに賛成なのです。

この結論については、以下の解説を読んでいただければその理由がわかると思いますので、ここでの説明は割愛します。

 

では、ネット上であがっていた声について思うことについて解説します。

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体罰禁止になると怒鳴れなくなる?

これが最も多くあがっていた声です。体罰を禁止されては子育てができなくなるしにくくなるという心配の声です。

ですが、ただ怒鳴るだけでは体罰にはなりません。(報道の仕方にも悪意を感じます)

おとな同士の軽い暴行なども通常は追訴されないのと同じで、今回の場合も暴力(暴言)の程度が軽い場合は追訴されません。ですので、怒鳴るくらいでは警察沙汰にはならないでしょう。

また、元児童相談所の職員として言わせてほしいのは、体罰が禁止になったからといって一律にすべての親を「虐待」と認定するようなことはしないです。児相職員は一回叩いたくらいでは「虐待だ!」とは言いません

「虐待」の画像検索結果

スーパーでだだをこねている子供を無理やり連れて帰ったからと言って、市民から通報があったとしてもそれくらいでは「虐待」認定しません。それくらいの親であれば、やっても「何が辛かったの?大変だったね。頑張ってたね。誰か助けてくれる人いないかな?」と相談ベースに持っていくくらいです。あくまでも「相談ベース」です

ですので、「スーパーや電車内で子供が無法地帯になりそう」と言っている人もいますが、そこで多少怒鳴ったり無理やり行動を制止したとしても問題にならないことは断言しておきます。

体罰と虐待がごっちゃになってて意味のない法律?

体罰と躾の線引をしっかりしないと意味がない」「虐待と体罰は違う」などという意見から、体罰の禁止は反対という声につながっています。

これは非常に難しい問題ですよね。でも、だからこそ私は「法律に体罰禁止を明記する」必要があると思っています。

なぜなら、「躾としての体罰」と「虐待」をしっかり線引するなんて不可能だからです。そんなことできる人がいたら、世界に法律で体罰禁止としている国なんて出てこなかったんじゃないかと思います。

スッキリで加藤さんが「虐待か躾かなんてはっきりわかる」と発言していましたが、そんなことありえません。(この発言はすごくショックでしたね。何もわかってない・・・)

私が経験した例をご紹介します。

中学生の女の子。成績が悪く、発達障害傾向があります。その子は勉強をしません。宿題をやる、手伝いをするなど基本的なことが他の子よりも明らかにできません。これは発達障害傾向も影響していると思われますが、他の子と同じように出来ることも普通にたくさんあるので、親としてはなぜそれ(普通のこと)が出来ないのかわかりません。「もっと頑張ってほしい、力を伸ばしてあげたい、社会に出て困らないくらいの最低限の力をつけてあげたい」という気持ちから、叱責していました。叩くこともたまにありました。でもお出かけにも連れて行っていました。  ※個人情報保護のためケース状況は多少変えています。ご了承ください。

さて、この場合は躾ですか?体罰ですか?虐待ですか?

この段階だと「虐待」とは言えないという人が多いのではと思います。

なので、私が親に「叩く以外の方法で伝えましょう」と指導した際は「これは躾です。親としての責任です、あなたがこの子の将来の責任をとってくれるんですか?」と言い返されてしまいました。

しかし、この事例の場合、最終的には食事量も減らされていたことが子供の訴えでだいぶ後にわかって、一時保護しました。でも体重が明らかに減るほどでもなく、子供の証言がなかったらわかりようがありませんでした。

「虐待」の画像検索結果

なので、躾なのか、虐待なのか、この判断はすごく難しいです。いろんな条件が一気にわかれば、判断できる場合もあると思います。でも現場でそんなことはありえません。体罰、躾、虐待はいずれも家庭内で起きていることです。親が全部本当のことを話すかもわからない、子供だって怯えていて嘘をついているかもしれない、親と子供は毎日毎日必死に生活していて、ズカズカと入り込めない。

これが今の児童相談所の限界です。学校やこの子が関わる機関に情報を流して、ちょっとでも怪しい行動や発言、怪我、様子がないかを日々チェックします。それらの地道な情報収集でやっと、「虐待ですよね」と言えるんです。

長くなってしまいましたが、躾としての体罰と虐待を線引するのは難しいのです。家庭の本当の内情がわかるまでに時間がかかるのです。

ですので、躾だろうがなんだろうが「体罰は禁止」とするしかないですよね。そうじゃないと『手遅れ』事案が出てくる可能性はなくならない、と私は思います。子供の命や安全を本当に守りたいのあれば、体罰を禁止するしかないのではないでしょうか。

児相職員の気持ちとしては、早い段階で親に「体罰は禁止されています、脳に影響を与えることがわかっています、極力叩かないで良い方法を考えましょう」という風に親を説得することが出来るのも、とてもありがたいですし、それが親への教育の近道だなと思います。

 

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児童相談所が無能だから悪い

これは本当に耳が痛い話ですが、元児相職員として全力で意見させてください。

この方の意見は極端ですが、ツイートの中には「児相がしっかりしろ」という声が本当に多かったです。

たしかに、東京都目黒区の結愛ちゃん、札幌市のことりちゃんについては、児相職員何してんだよ・・・と思いました。不手際がすぎます。今の法律、体勢でも改善できる点は多くあると思います。

 

ですがそれも含めて、私が思うことは、「しっかりしたくてもできない現状がある」ということです。

  • 児相職員の専門的知識の確保は難しい(行政が福祉にお金を相当投入しない限り専門家としての人材を今すぐ増やすことは出来ない)
  • ほとんどの児相職員は必死に働いている(残業、土日出勤、夜間の緊急出動が当たり前)
  • 体罰禁止によって仕事量が減る=余計な親の言い訳や抵抗に屈しないでよくなる。緊急対応や大事な要件に割く時間が増える

これが正直な気持ちです。体罰禁止で児相が救われる点はすごく多いんです。

体罰禁止によって児相が救われるということは、「児相職員が楽をする」ということではなくて、子どもたちの安全や児童福祉のレベルがあがることにつながるというなんです。

「児童相談所 残業」の画像検索結果

まず、専門的人材の確保なんていうのは時間とお金がかかるのはみなさんおわかりだと思うのですが、それ以前に、今の児相に入ってこようなんて人材、ほとんどいません。児相の立場は相当弱いですし、体罰が禁止されていないので「これが私達なりの躾だ!」と主張され、児相の判断や対応に対して裁判を起こされることもあります。実際に起こさなくてもそれを振りかざしてくる親がいます(結愛ちゃんの父親はそれに近いことを小学校や児相にしてましたね)

そして、人が集まらないと今の「手がまわらない児相」は変わりません。「48時間ルールをしたくてもできない、48時間ルールを優先するばかりに、親のフォローや丁寧なアセスメントができない」という現状が変わりません。

私が現場にいたときは、月100時間なんて当たり前でした。(お金は半分くらいしか出ませんが)

私は下っ端であまりなかったのですが、子育て中の女性職員でも土日に「緊急通報」があればかけつけることもしょっちゅうありました。「土日出勤したんだからその分平日休んでるでしょ?」と思った方、それは児相以外の公務員ならそうかもしれませんが、そんなことほとんどできません。毎日、ケース協議や訪問が入っているので休みがとりたくてもとれないのです。

そんなバタバタした職場でした。

また、人が集まらないと、専門知識を学ぶ機会もつくれません。人が足りないから研修に行けないということも、実際によくありました。

 

まとまりがなくて申し訳ないのですが、児相職員は決して楽がしたくて体罰禁止に賛成しているわけではないです。国も児相を守るために体罰禁止を促進しているわけではないです。

何かを変えないと仕事は増えていく一方で、丁寧に仕事しろなんて無理。なんです。私は現場に居たときそう思ってました。

大きな一手になってくれるのが、「体罰禁止」だと思います。

「児相職員のための法律なのか」とおっしゃるのであれば、体罰禁止以外に、子供を助ける最前線の場『児童相談所』がしっかり専門性を保って機能するようになる方法を教えてほしいなと思います。

親のケアをするべき

これは私も必要だと思います。

ですが、体罰禁止を法律を明記することを反対する理由にはならないと思います。

まず、一番最初の画像をしっかりみてもらえばわかるのですが、「児相に医師と保健師を配置する」という点もしっかり改善点として含まれていますよね。親のメンタルケアを行う専門職である「保健師」も児相にやっと配置されるのです。これがちゃんと配置されれば親のメンタルケアは今よりも保障されます。

また、前述の「児相がしっかりするべき」という話と通じるのですが、親のメンタルケアも、課題が膨大で時間がかかります。昔と違って核家族が増え、相談できるところがない、負担が増えている、育てにくい世の中になった・・・などなど問題が多くなっています。ですので、保健師を増やすなどしてじわじわとやっていくしかないですよね。

じわじわやっていくのが限界なので、いますぐ子供の安全もまもれる対策にはなり得ないとういことです。

 

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賛成の声

私が「そう思う」とおもった賛成の声をまとめておきます。

この考え方が日本は本当に弱いなと思います。「親のもの」という感覚が強いです。これは他の先進国と比べると明らかです(卒業論文で研究してました)

 

わたしも「家の中で豹変する親」というのは少し怖いなと思います。

あと、情報共有と訪問はすごく大事。本当に大事。でもそれをする時間の余裕がまったくないです。業務が多くて情報共有が遅れるのは言い訳かもしれないけど、でもそれくらい毎日必死です。コーヒー飲む余裕なんてありません。

この考えが根強いから、反対意見が多いのだろうなと思います。たしかに親として叱る必要はありますが、それが正義とは思わないでほしいです。

 

虐待禁止は前からそうなってます。でもそれを「体罰」と主張するのが通ってしまう世の中だから問題なんですよね。(児相はそう言われるととても弱くなります。)

この方が言うように、子供が安心して本当のことを話せる体制づくり、そしてそれを話したときに後から後悔しないでいい大切づくりは、体罰禁止とともにとても大事なことだと思います。

 

断ち切りましょう。躾としての体罰が当たり前じゃなくなるといいなと思います。

 

暴力にはこのような一面があることを忘れちゃいけないですよね。心が受けるダメージは「悪いことをした」という学びよりも大きい場合があります。

 

心に余裕がない親がきっと体罰をするというのはあると思います。だから、心の余裕がある親は叩かないしその子供も素直に育つ。

心の余裕をつくってあげることは児童相談所の仕事です。でも時間がなくてあまりしてあげられないのが悔しいところです。

その他の声に対するコメント

さまざまな声について、児相職員として感じていることを書きます。(もちろん個人的な意見です。)

虐待の厳罰化は賛成です。ですが、逮捕されるような親は「自分が虐待をしている」と思っていないので厳罰化しても効果はあまりないかなと思います。(「体罰は禁止されていない」ので「逮捕される」なんて考えてもいないです。私が指導した親にも、結構叩いて怪我もさせてるのに「躾」と本気で言い張る人、たくさんいました)

無視はしていないと思います。ちゃんと「体罰禁止」以外にも保健師配置などが盛り込まれているので。

ですが、お母さんお父さんたちが窮屈になることは本当に良くないですよね。ただでさえいっぱいいっぱいなのに、周りから(しかも何もわからない人たちから)不必要に責められるなんて辛すぎます。

体罰禁止になったあと、周りの人がちょっとやそっとのことで「体罰だ!虐待だ!」と騒ぐのではなく、その家族を気にする(時には相談にのったりする)ようになればいいなと思います。(理想論かもしれませんがそれが一番いいなと思います。叩いてしまったのを目撃したら「親がいっぱいいっぱいになってるのかな、それとも子供に問題があるのかな」と、考えるきっかけになると良いです)

体罰を全面的に法律で禁止している国一覧

最後に、海外で体罰禁止が法律に明記してある国を掲載しておきます。

国によって、社会情勢もサービスも文化も何もかも違うので、一概に「右にならえ」をすれば良いという話ではないです。

でも、世界では体罰禁止を法律に明記してある国が増えてきていることも知っておいてもらえたらと思います。

※https://www8.cao.go.jp/youth/suisin/working-team/k_4/pdf/ss1.pdf

イギリスは元々体罰に厳しくない国ですし、アメリカは州ごとに禁止しているか異なっています。

アメリカでは、日本のように「親権」が強くないので、体罰禁止が法律化してなくても児相のような機関が子供の安全を守ることが日本に比べてかなり容易です。

(日本は、親権が強いから保護者の意に沿わない動きがとても取りにくいんですよね。)

日本で、どうやって子供を守っていくか、またその子供を守る親の心の健康を守っていくか、これからも議論を重ねていく必要があると思います。

まとめ

今回は、児童虐待防止法に「親による体罰禁止」が明記される予定であることについて、私なりの意見をまとめてみました。

だらだらと長くなりまとまっていないのが申し訳ないですが、体罰禁止によって子供の命がひとつでも多く救えたらと思います。

親への支援やフォロー体制についてもしっかり協議して、充実させて欲しいなと思います。

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