2019年6月24日夜、NHKで放送されたドキュメンタリー番組『ノーナレ』が反響をよんでいます。
そこには、劣悪な環境で奴隷のように働かされるベトナム人技能実習生の姿が。
会社名こそ明かされませんでしたが、愛媛県今治市でタオルを作らされているとのことから、ネット上では『今治タオル不買運動』が起こっています。
そしてその不買運動に対して「今治タオルの組合じゃないのにおかしい」と批判の声もあがっています。
この一件について詳しくまとめてみました。
ノーナレで放送された過酷な環境
始まりは、NHKに送られてきた「たすけてください」というメール。
ある晩、番組関係者のもとにメールが届いた。「こんばんは」「たすけてください」。送り主は一人のベトナム人女性。技能実習生として縫製工場で働いているという。
雇い主の目をかいくぐり、次々と送られてくる動画。そこには劣悪な住環境の中、休みもほとんどなく、低賃金で長時間の労働を強いられる日常が映し出されていた。ある日、工場を抜け出した女性にカメラは密着。その訴えは、絶望的な現実を変えることができるのか。
カメラが密着して捉えたものは、あまりにも可哀想な労働環境、生活実態でした。
#ノーナレ。「婦人子供服製造」が職種の技能実習生にタオル製造だけをさせてる屑会社の寮(家賃3万円)。窓がない暗く狭い部屋に大勢の実習生が暮らし、長雨の時は生乾きの服を着て仕事。「28人のためのシャワールーム」は「むきだしのシャワーが4つ」と、技能実習生制度は現代の奴隷制度ですね。最低。 pic.twitter.com/dEnp2EBvq3
— YAF (@yagainstfascism) 2019年6月24日
技能実習生をとりあげた #ノーナレ 。冒頭、この8年で174人の技能実習生が死亡という報道、中盤で多くの技能実習生の死者が出てる事を追及する有田芳生氏の国会質疑の様子が流れ、最後に、技能実習生に酷い対応をし、役所から調査を受けつつも操業している屑会社で実習生が脳出血で倒れ、意識不明と… pic.twitter.com/ki18CDur9p
— YAF (@yagainstfascism) 2019年6月24日
放送された内容をまとめると、
■「婦人子供服製造」が本当の職種である技能実習生に、タオル製造だけをさせてる。市の監査の際はタオルを隠させ、Tシャツをつくるフリをさせる。
■家賃3万円の寮は、窓がなく狭く暗い部屋。長雨の時は生乾きの服を着て仕事。28人で4つのむきだしのシャワーのみ。
■残業180時間
■社長から「早朝から深夜まで働かないと帰国させるぞ」と言われる。ノルマが厳しい
■毎日手が痛くて、触るだけでも痛い。
■2019年6月中旬、脳出血で倒れた技能実習生が意識不明の重体。
これが本当だったら、日本の国で起きているなんて信じたくないような実態です。
東京や主要都市でない限り、家賃3万出せば、1Kユニットバスのお部屋が借りられると思いますが、ここの寮は窓もなく、洗濯物が乾かないほどのスペースしかなく、シャワーも28人で4つなんて・・・
3万円もとるなんてヤクザか何か?と思ってしまいます。
残業時間も、これだけ日本で問題になっているのに外国人は関係ないとでも言いたいのでしょうか。
そして、意識不明の重体という事実。それでもなお操業を続けている会社。問題だらけ、信じたくないような事実ばかりです。
ベトナム人技能実習生とは?
ベトナム人技能実習生が本来どのような目的、背景をもって日本に来ているのかを確認しましょう。
制度の目的・趣旨は1993年に技能実習制度が創設されて以来終始一貫している考え方であり、技能実習法には、基本理念として「技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない」(法第3条第2項)と記されています。
外国人技能実習制度の闇
今回の一件は、『氷山の一角』だとも言われています。
それはつまり、このような違法な労働を強いられている技能実習生たちがたくさんいることを示しています。
2015年に技能実習生として日本に来たベトナム人女性(36歳)は、広島県の実習先で車のシートを縫製する仕事をしていたが、毎日朝から深夜まで働かされても残業代が払われず、実習を始めて5か月目に職場から逃げ出した。
「残業代を払わないなら残業したくない」と何度も抗議したが、その度に仕事のノルマを増やされて残業せざるを得なくさせられたり、業務以外のトイレ掃除や片づけなどを命じられたりという嫌がらせを受けた。
賃金は月13万円で、家賃などが天引きされて手取りは8万円ほどだった。以前は中国人の実習生も受け入れていたが、ほとんどの従業員が逃げてしまったという。
言葉の壁、いじめ、低賃金、強制収容・・・
外国人技能実習制度を利用して儲けようとしているベトナムの送り出し機関や日本の団体が存在することも確か。
また、「日本の技術を学ぶ」というそもそもの目的が機能していないことも問題です。
外国人技能実習制度には、たくさんの問題が表出していることがわかりますね。
今治タオル不買運動
今治タオル不買運動が起こっている現状についてお伝えします。
とりあえず今治タオルの不買運動を開始しました。
( ˘ω˘ )#今治タオル https://t.co/7STiNT3YzJ— ブースカちゃん (@booskanoriri) 2019年6月24日
こちらの投稿は、100以上のリツイートといいねが付いています。
今治タオル不買運動やろう。
同業者はこのクソみたいな会社特定して締め上げるべき。でないと、今治タオルのブランド価値はただ下がりだよ。#nhk#ノーナレ— Quatsch!_bot (@Ich_bin_Herr_K) 2019年6月24日
この方のように、会社が特定されていないことで、今治タオル全体のブランド価値低下を危惧している方も多くいらっしゃいました。
たしかに、ベトナム人技能実習生たちを助けるには、今治タオルを買わないことよりも、今も操業を続けている会社を特定してやめさせることが重要だと思います。
今治タオル好きで使ってたけど、
この実態見たらとても買えない。https://t.co/uQWg4mzLAB— 月岡 【Rera】怜 (@Farvardin) 2019年6月25日
このように不買を決める人、不買を呼びかける人が続出しています。
録画してたNHKのノーナレを見てるのだが、もう壮絶すぎる。今治のタオル工場で奴隷労働をさせられるベトナム人技能実習生たち。ともかく今治タオルは不買運動したほうがいい。 #ノーナレ
— Yusuke_Todaka (@Yusuke_Todaka) 2019年6月24日
消費者も、今治タオル不買運動をやってはどうか。
もともと日本人労働者も粗末に使い捨て、冷酷に使い壊しにしてきた産業と地域だ。
今治タオル、私は買わない。色やデザインは魅力的でない。付加価値を分かっていない。なのに割高。他の地域産のタオルも、品質は同じかそれ以上のものもある。— ヤナコーナ・アクリャ (@kurakacacique) 2019年6月25日
昨夜たまたま観たNHKノーナレ…外国人技能実習生の過酷な労働ಠ_ಠ!今治タオルだけじゃないだろう…だがまずは今治タオル業界全体で対策を早急にしないと不買運動に拡大すると思う… 様々な選手のバナータオルにもよく使われるから心配…😓
— marippe (@marikoby26) 2019年6月25日
この現状をテレビで全く報道していないことにも違和感がありますが、問題となった今治の会社にこの声は届いているのでしょうか。
自分たちがやってしまったこと、現在もやっていることに罪の意識があるのでしょうか。
そこが一番気になります。
報道されない限り、ネット上での声が大きくなって実際に今治タオル業界に影響が出ること以外に、この問題を解決できる糸口は見えてきません。
だから、やれることからやるしかないと不買運動を呼びかける人が多くいらっしゃるのだと思います。
しかし、一方で真面目に今治タオルに向き合って製造している人達がいることも忘れてはいけません。
その人達まで迷惑をこうむってしまうようなことがないといいと思います。
ですので、一刻も早くこの会社を特定して行政がしっかり指導して、他に同じように苦しんでいる人がいないかを調べてほしいなと思います。
追記:不買運動に対する批判
不買運動が起こったことで、風評被害を心配する声、実際に関係のない会社に電話がくるなどの被害など、
不買運動を批判する声も大きくなりました。
今治の
・関係ない企業がネット上の憶測で風評被害にさらされてる
・本当はそもそも組合にさえ入ってない企業だったにも関わらず組合が批判されてる
・結果組合に入ってない「今治タオルブランド」でさえない会社のために不買運動だのの騒ぎに
という、考えられる限りほぼ最悪の展開だよなこれ。
— 織部ゆたか (@iiduna_yutaka) 2019年6月25日
ノーナレの今治タオルの件、地域団体商標の弱点が出たな。NHKの報道からは、当該企業が「今治タオル工業組合の組合員であるか否かすら特定できない」にもかかわらず、「今治タオル」という地域団体商標全体の信用が毀損されようとしている。無実の組合員カワイソス。https://t.co/94DZaj0HNH
— S.A.M.🇫🇮🇪🇪 (@daselangP) 2019年6月25日
今回の件は今治タオル組合に入ってない業者。つまり「今治」の「タオル」に乗っかるだけの悪質業者。
組合では吸水性や脱毛率などタオルにとても厳しい審査があってあんな風に作られたタオルでは合格できはずもないのです。単に不買って言ってる人はやめて💦認定マーク入っているやつなら大丈夫だから pic.twitter.com/C92yHA3VnD— もみじーぬ💎応援済み (@momimi5) 2019年6月25日
たしかに、今治タオル全体に対する不買運動はよくないと思います。一生懸命丹精込めて今治のタオルを作っている人たちに罪はありません。
ですが、認定マークについては、放送された映像の中にマークがついているタオルがあるとのこと。マークがついていれば「正規の今治タオル」と言っている人もいましたが、どうやらそうではないという情報も。
「今回の件は組合に入ってない企業の案件です」
の部分について、業界のことが分からず申し訳ないです💦読み砕くことができなかったのですが、組合に入っていなくても正規の今治ブランドタグをつけることができるのでしょうか?— ゆーとぐ@Webエンジニア (@yu_togu) 2019年6月25日
一応参考までにですが
今治タオル工業組合に加入し、一定水準を満たした物が初めて今治タオルのタグを付けることが可能になります
複数枚同時に織りあがったタオルを裁断を行った後に仕立て屋さんに依頼もしくは自社内で仕立てて製品になります
今回は縫製会社での案件なので前者ですかね— 犬 (@ura_riaru) 2019年6月25日
この2つのツイートを読む限りでは、かなり複雑そうですね。マークだけではわからないというのが結論でしょうか。
追記:今治タオル公式サイトが「ノーナレ」について発表
6月26日、今治タオル公式サイトが今回の一連の報道について、『NHK「ノーナレ」報道についてのご報告』を公表しました。
以下、報告内容全文です。
6月24日(月)NHK「ノーナレ」報道(本報道)について、当組合に対しても様々なご意見を頂戴しております。また、今治タオルをご愛顧頂いている皆様、お取引先各社様、並びに関係各所の皆様方には多大なるご心配をお掛けしております。つきましては、当組合が現時点で把握しております事実関係についてご報告をさせていただきます
今治タオル工業組合は、タオルを製織する会社104社(2019年5月)が所属する組織で、タオルの生産に関する情報の収集及び提供並びに調査研究等、今治タオルの振興を図る事業を実施しております。
まず、本報道にありましたベトナム人技能実習生の皆さまが受けた耐え難い苦痛に対しまして、当組合では社会的責任及び道義的責任を非常に重く受け止め、事実確認を進めております。
また、仕事中に脳出血で倒れ意識不明の状態が続いている実習生につきましては、外国人技能実習機構(同機構)が早急に事実を確認しているとのことですが、一日も早い回復を願っております。
当組合では、現在、本報道に係る事実関係についての情報収集をしているところでありますが、現時点で当組合が把握している事実は次のとおりです。
(1)ベトナム人技能実習生の受入企業(当該企業)は、当組合に所属する企業(組合員)ではありません。
本報道で「28人のベトナム人が働く下請工場」「仕事はタオルの
また、本報道で「明日組合で話し合うと言っている」とある組合は、外国人技能実習生の監理団体(受入を行う協同組合)であるとされ、当組合とは別の組織です。当該企業と当組合との直接の接点はありません。
(2)当該企業は当組合員等の縫製の下請企業であること当組合も社会的責任及び道義的責任を重く受け止めています。
当該企業は当組合に所属する企業(組合員)ではありませんが、組合員等の縫製の下請企業であることから、今治タオルの振興を図る取り組みをしています当組合としましても、社会的責任及び道義的責任があると考えており、この問題を非常に重く受け止めております。
(3)今後の対応は、技能実習生の労働環境の改善を最優先に考えて支援などに取組みます。
現在のところ、当組合でも情報収集に努めるとともに、本報道にもありましたように同機構が「労働基準法や技能実習法などに反した疑いで会社の調査は続いている」とのことであり、同機構の調査結果となんらかの措置を参考にして、実習生の身分や地位等の利益を最優先して労働環境の改善などの対応を真摯に検討してまいります。
(4)法令遵守等の周知徹底の強化のための全員協議会およびコンプライアンス研修会を開催いたします。
当組合では、経済産業省等から指導を受けています「繊維産業における外国人技能実習の適正な実施等のための取組」と「繊維産業の適正取引の推進と生産性・付加価値向上に向けた自主行動計画」を基に、これまで以上に組合員はもとより下請企業の法令及びコンプライアンス遵守について周知徹底を強化します。
そのため、7月8日(月)午後1時30分から組合員104社を招集して、全員協議とコンプライアンス研修「組織で考える不祥事防止策」を開催いたします。また、一過性のことと捉えず、今後より一層業界として是正のための取組みを継続してまいります。
また、調査と並行し、組合員104社に対し、各社内のみならず、各社の業務委託先に関しても、労働者の健全な待遇や環境形成のサポートを行なえる制度構築、内規設計等を検討してまいります。
以上
報告内容を簡単にまとめると、
- 今治タオル工業組合に所属する企業(組合員)ではなかった。
- 所属する組合員ではないが、組合員の下請けの企業だった。そのためしっかり責任をとろうと思う。
- 技能実習生の労働環境を整えたり、組合員全社集まって会議したりして改善していく。
ということですね。
ノーナレの反響が予想以上に大きく、ネットでも炎上し、今治タオルの組合は対応に追われたことと思います。
普段、真面目に働いている人たちまでも巻き込まれたのだと思うと心が痛いです。
ですが、今回のことで、NHKの放送では明らかにされなかった問題の下請け業者が判明し、適切な対応がとられることになりました。
意識不明の重体となっている技能実習生をはじめ、現在もその場所で働いている人、逃げて今は苦しんでいなくても一時でもその場で働いていた人たちが少しでも報われたならよかったなと思います。
誤解もとけ、あとは個々の判断になっていくのだと思いますが、私は下請けの業者が2度とこのような失敗を犯さないことを信じたいと思います。
まとめ
今回は、NHK『ノーナレ』で放送されたベトナム人技能実習生の実態についてまとめました。
日本でこのような実態があるのにも関わらず、大きく報道されない事実や改善が見込めないことにもどかしさ、腹立たしさを感じていましたが、今治タオル組合も公式で報告を出してくれるなど、動きがあってほっとしています。
脳出血で意識不明となっている方の一刻も早い回復を祈っています。
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